ノカノワ

「無肥料」「無農薬」は使ってはいけない?表示のルールを解説

「無肥料」「無農薬」といった言葉を見て、なんとなく体にやさしそう、安全そうと感じる方も多いかもしれません。

ですが、「無肥料」「無農薬」という言葉は、たとえ実際に肥料や農薬を使っていなくても、国のガイドラインで「表示しないよう求められている表現」なのです。

今回は、その理由と、肥料や農薬を使っていない場合の正しい伝え方について解説します。

「無肥料」「無農薬」が使えない理由

ガイドラインで禁止されている

農林水産省が定めた「特別栽培農産物に係る表示ガイドライン」では、次のように明記されています。

「『無農薬栽培』『無化学肥料栽培』等の不使用強調表示は、消費者に誤認を与えるおそれがあるため、表示しないこと。」

つまり、「無農薬」「無肥料」という表現は、事実かどうかに関係なく、消費者に「完全にゼロ」と誤解させる可能性があるため使えません。

これは法律で明確に禁止されているわけではありませんが、消費者庁が監督する景品表示法の「優良誤認表示」にあたるリスクがあるため、実務上は使用しないことが徹底されています。

なぜ誤解を招くのか?

たとえば私たちが肥料や農薬を一切使わずに育てても、自然環境には完全に避けられない要素があります。

  • 周囲の畑から風で農薬が飛んでくる(ドリフト)
  • 大雨や洪水で、近隣の肥料や農薬が流れ込む
  • 土の中に、過去に使われた農薬や肥料の成分が微量に残っている

こうした自然の影響まで「完全にゼロ」と断言することはできません。

このように「自然の影響まで完全にゼロ」とは断言できないため、「無農薬」「無肥料」と書いてしまうと、消費者が事実以上の安心感を抱いてしまうおそれがあるのです。

正しい表現方法

では、実際に農薬や肥料を使っていない場合、どう伝えればよいのでしょうか。

ガイドラインでも認められているのは、「自分が行った栽培管理の事実を正直に伝える表現」です。

  • 「栽培期間中、肥料や農薬を使わずに育てました」

  • 「農薬や肥料を施さずに育てました」
  • 「肥料や農薬に頼らず作物を育てています」

これらは「完全ゼロ」と断言するのではなく、「自分が何を使わなかったか」を正しく示す言い方なので、消費者を誤解させることがありません。

海外ではどうなのか?

日本ほど「無農薬」「無肥料」という表現をガイドラインで明確に禁止している国は多くありません。
ただし、どの国でも「完全ゼロ」と誤認させることは避けるルールになっています。

  • アメリカ
    「pesticide free(農薬不使用)」などの表現は条件付きで可能ですが、どの段階で使用していないか、周囲の影響がある可能性などの説明が必要です。
    実際には USDA Organic(有機認証) が基準として重視されており、ラベル表示は認証に頼るケースが一般的です。

  • ヨーロッパ
    EU有機認証(EU Organic)が安全性や栽培方法の証明として重視されており、「無農薬」といった表現はほとんど行われません。

  • 中国
    「無農薬」といった表示は法律上禁止されていませんが、虚偽広告にあたると食品安全法や広告法で取り締まられます。2019年以降はラベル管理が強化され、実務的にはリスクが高い表現です。

ノカノワでの表記

ノカノワでも、この考え方に基づき、誤解のない表現を大切にしています。

たとえば本来であれば、

「無肥料・無農薬栽培の農家さん」

と言いたいところですが、

「農薬や化学肥料に頼らない農家さん」

といった表現にしています。

まとめ

  • 「無農薬」「無肥料」は、完全にゼロと誤解させる恐れがあるため、ガイドラインで使用が禁止されています

  • 「農薬や化学肥料に頼らず作物を育てています」は、適切な表現です

  • 表現ひとつひとつに、誤解を避ける配慮が求められています

安心して選んでもらえるように、ノカノワではこれからも誠実な言葉 で、農薬や化学肥料に頼らない農家さんの姿を伝えていきます。