農業の未来は二極化だけでは語れない!大規模・小規模、その間にある多様なかたち
いま、日本の農業には対照的な二つの姿がしばしば語られます。
ひとつは、大手企業や法人が手がける「大規模で効率的な農業」。
もうひとつは、個人や小さなチームが自然や人との関わりを大切にする「小規模で丁寧な農業」です。
確かにこの二つは農業の方向性を理解するうえでわかりやすい対比ですが、実際にはその中間に多様な取り組みがあります。
そして未来の農業は、二極化という単純な構図ではなく、大規模・小規模の間に広がる多様なかたち が重要になっていくと考えられます。
ノカノワが支持する「農薬や化学肥料に頼らない農法」は、その多様な農業の中にある選択肢のひとつです。
大規模農業の現実と課題
大規模化が進む背景
日本の基幹的農業従事者は、2024年時点で約111万人。
2023年の約116万人からわずか1年で約5万人(約4%)減少しました。
さらに長期的に見れば、2020年の約136万人からわずか4年間で約25万人、約2割の減少 となっています。
平均年齢も67歳を超えており、高齢化と後継者不足が深刻な課題です。
こうした状況を補うため、広い圃場を効率的に管理し、少人数でも大量に生産できる「大規模農業」が広がっています。
大規模農業のメリット
-
収量の安定とコスト削減
-
労働力不足を補う仕組みとして有効
-
国家レベルでの食料安全保障を支える
農業用ドローンによる散布、AIによる生育予測、ロボットによる収穫や選別。
これらの「スマート農業」はすでに各地で実用化されています。
大規模農業の課題
しかし効率化の裏には課題もあります。
-
肥料や農薬への依存
-
土壌や生態系への負荷
-
地域の営みや農村風景の喪失リスク
特に化学肥料は、温室効果ガスの一つである一酸化二窒素(N₂O)を排出し、SDGsや脱炭素社会の流れと矛盾する点が問題視されています。
小規模農業と自然栽培の価値
小さくても意味のある農業
一方、小規模でも丁寧に行われる農業も重要な役割を担っています。
農薬や化学肥料に頼らずに作物を育てる自然栽培がその代表例です。
-
農薬を使わないため虫害が発生しやすい
-
肥料を使わないからこそ土づくりに向き合う必要がある
-
季節の変化を感じながら作物に寄り添う暮らしに深い価値がある
小規模農業は「安全な食」「地域とのつながり」「農の多様性」を守る存在として、社会的に重要な意味を持っています。
自然栽培を大規模化するのは難しい?
「自然栽培をもっと大規模にすればいいのでは?」と思う方もいるかもしれません。
しかし、自然栽培には大規模化を難しくする特徴があります。
-
農薬を使わないため、病害虫の管理は人の観察や手作業に依存
-
雑草管理には草刈りや草の被覆など、細やかな作業が欠かせない
-
土や気候条件が地域ごとに異なり、機械による一律管理が困難
つまり自然栽培は「観察と手作業」が前提の農法であり、面積が広がるほど管理が難しくなるのです。
これからの農業は「二極化」ではなく「多様化」へ
大規模農業と小規模農業という二つの対比はわかりやすい枠組みですが、農業の未来を考えるときには「多様化」という視点が欠かせません。
中間的な実践の広がり
-
化学肥料の使用を減らしつつ有機資材を併用する
-
精密農業で必要な場所だけに肥料・農薬を施す
-
大規模法人の中に環境配慮型の小区画を導入する
すでに各地でこうした「折衷的な取り組み」が始まっています。
世界の動きと日本の未来
世界では、農業を持続可能な形へと転換する動きが加速しています。
EUは2030年までに化学農薬を50%削減する目標を掲げ、化学肥料の使用削減も脱炭素社会の重要課題とされています。
こうした国際的な潮流は、日本の農業にも大きな影響を及ぼします。
ただし、それによって自然栽培が一気に主流になるわけではなく、現実的には、化学肥料や農薬の使用を減らしつつ、精密農業や有機資材を取り入れる「中間的な農業」 が広がっていくと考えられます。
その中で自然栽培も、選択肢のひとつとして関心を集め、一定の広がりを見せていくでしょう。
まとめ
農業の未来は、大規模か小規模かという二択ではありません。
大規模農業は効率や安定した供給を支え、小規模農業は地域や多様性を守ります。
そしてその間では、多様な工夫や折衷的な取り組みが広がっていくでしょう。
これからの時代に求められるのは、こうした多様性を認め合いながら、それぞれの農業が持つ役割を活かしていくことです。
私たちはその中で、「小さくても自然や人に寄り添う農業」を選び、その実践を仲間とともに広げ、次世代へとつなげていきたいと考えています。
