農薬の「基準」は本当に安全?見えにくいリスクと農薬を使わないという選択
「農薬は基準内なら安全」
「残留量はごくわずかだから問題ない」
そんな声をよく耳にします。
実際、今流通している農薬は、すべて国の安全基準をクリアしたものです。
けれど最近、その“安全基準”そのものに、疑問を感じる人が少しずつ増えてきています。
なぜ、基準を守っているはずなのに「不安」を感じる人がいるのでしょうか?
そこには、見えにくいリスクと、それを避けようとする選択肢があります。
今回はその背景について、わかりやすく解説します。

規定内なら本当に安全? ― 農薬の「基準」が抱える課題
農薬の基準は、動物実験で得られた「この量までは健康に影響が見られない」とされる無毒性量(NOAEL)を出発点にしています。
そこに、動物と人間の違いや個人差を考慮して 通常100倍の安全係数で割った値(NOAEL ÷ 100) が一日許容摂取量(ADI)です。
ADI は「人が生涯にわたり毎日摂取しても健康に影響を及ぼさない量」として用いられます。
さらに 一度に大量摂取した場合の急性影響 を評価する指標として 急性参照用量(ARfD) も設定されており、日本でも残留基準の見直しに活用されています。
一見すると非常に厳格な制度に思えます。実際、農薬が市場に出回るまでには、急性・慢性毒性試験や発がん性試験、環境影響評価など、数多くの審査をクリアしなければなりません。
それでも近年、「その基準だけで本当に安心できるのか?」と疑問の声が上がる理由が、いくつかあります。
複数の農薬が合わさったときの影響は?
私たちが日常的に食べる作物には、微量ながら複数の農薬が残留している場合があります。
こうした農薬が、異なる作物を通じて少しずつ体内に取り込まれる現象を複合曝露と呼びます。
問題は、個別の農薬が基準内でも、それらが組み合わさったときの相乗・累積作用が十分に解明されていないことです。
「複数の農薬が同時に体に入ったとき、どのような影響が起こり得るのか?」という問いに、現時点で確かな答えを示す研究は多くありません。
欧州食品安全機関(EFSA)もこの課題を踏まえ、2013年から混合曝露リスク評価の枠組みを整備し、2021年にガイダンスを改訂するなど評価手法の強化を進めていますが、国際的にもなお発展途上です。
すべての人にとって“同じ安全”とは限らない
もう一つの問題は、安全基準が“平均的な健康な大人”を前提にしている点です。
- 体の小さい子ども
- 妊娠中の女性
- 妊娠を希望している方
- 免疫力の低下した高齢者や病中の方
- アレルギー体質や化学物質過敏症の方(医学的診断基準は確立途上)
- 慢性的な持病を抱えている方(肝機能・腎機能が弱っている方など)
これらの人々にとっては、「平均的な安全量」でも影響が出る可能性があります。
特に、発達途中の神経系に影響する可能性が指摘されている農薬もあり、子どもの摂取リスクをどう捉えるかは、現在も研究が進められています。
国によって基準が違うという現実
農薬の「安全基準」は、実は国によって大きく異なります。
たとえば EU では2018年にネオニコチノイド系農薬の屋外使用を原則禁止しましたが、日本では現在も同じ成分が使用可能です(※2025年時点)。
これは、「どのリスクをどれだけ許容するか」という考え方の違いに基づくものですが、消費者にとっては「国が違えば扱いも変わる」という事実が、かえって不安のもとになることもあります。
環境への影響は、すでに明らか
農薬を考える上で、もう一つ忘れてはいけないのは、自然環境との調和です。
農薬は、使用された場所以外にも広がり、さまざまな生きものや生態系に影響を与えることが報告されています。
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ミツバチなど受粉を担う昆虫の減少
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土壌や水への成分残留
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周辺の野生動物や微生物バランスの変化
こうした影響は国内外で多数報告されており、農業と環境問題が深く関わっているのは事実です。
だからこそ生まれる“不安”
こうした「基準の限界」を知ると、多くの人がこう思います。
「本当に、安心して子どもに食べさせられるのかな?」
「見た目がきれいな野菜でも、目に見えないリスクがあるのでは?」
ここで浮かび上がってくるのが、人や環境へのリスクを減らすために「そもそも農薬を使わない」という選択肢です。
農薬を使わない自然栽培のような栽培方法は、農薬による健康リスクを避けるだけでなく、生態系や土壌、水質への影響を最小限に抑えるための農法でもあります。
安心を超えて、“信頼できる人から買う”という選択
農薬を使わない栽培の魅力は、ただ「農薬を使っていない」ことだけではありません。
それは、誰が、どんな想いで、どんな環境で育てたのかが見えるという点にあります。
けれど、いざ「農薬を使っていないものを選びたい」と思っても、「本当に使っていないのか?」「どんな人が作っているのか?」と不安になることもあるのではないでしょうか。
だからこそノカノワでは、調査や取材をもとに、本当に信頼できると判断した農家さんだけを紹介しています。
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農薬を使わないことにこだわる理由
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土や虫、草とどう向き合っているのか
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どんな想いで、どんな人に届けようとしているのか
そうした背景を丁寧に伝えることで、“安心”を超えた“信頼”で選べる農産物との出会いを届けていきたいと考えています。
まとめ ― 科学だけでは測れない「安心」のかたち
農薬の安全性は、国の基準に基づいて「問題ない」とされています。
しかし、複数の農薬が同時に体に入るリスクや、子ども・高齢者への影響、長期的な環境負荷については、まだ解明されていない部分も多くあります。
そんな中、「わからないものは使わない」「自然のしくみに委ねて育てたい」という考え方に基づく栽培方法は、“絶対に安全”を求めるのではなく、“信じて選べるもの”を育てるための選択肢だと言えます。
ただ、こうした農法は、まだ一般的とは言えません。
天候や病害虫の影響を受けやすく、収量も限られるため、手間に見合った価格で売ることが難しい現実もあります。
それでも、自然と共に生きる道を選ぶ農家がいるのは、「安心できる食を届けたい」「環境に負荷をかけず農業を続けたい」という強い想いがあるからです。
ノカノワでは、そんな農家さんの想いや畑のようすを丁寧に伝え、
“この人から買いたい”と思える出会いを広げていきたいと考えています。
土と人と自然を、未来へつないでいく。
ノカノワは、その一歩となる出会いを、これからも丁寧に届けていきます。
