ノカノワ

なんでタガメはいなくなったの?

タガメとは?

ムキムキの前脚がかわいい昆虫「タガメ」

うまく自分では写真が取れなかったのでフリー写真を拝借しました。

でかいカメムシの仲間

タガメは日本最大のカメムシ目コオイムシ科に属する昆虫で、水辺に生息します。

タガメの名前は、「田のカメムシ」に由来します。
稲作が多い日本ではかつて、水田でよく見かけられたためです。

孵化した幼虫は5回脱皮して成虫になります。野外での寿命は約1年です。長生きですね。

前脚で獲物をホールド!

鋭利な爪は獲物に食い込みます。タガメは肉食性で、捕まえたエサに口を突き刺します。釣針のような返しがある口針は一度刺されたら抜けにくく、消化液を注入して溶かしたものを吸います。

バリバリ食べるのかと思いきや、溶かしたものを吸うのはおもしろいです。

カエルや魚を食べるみたい。

写真で見ると、とてもかっこいいです。実際に食べているとこを見てみたいですね。

どうして最近野外で見つからないの?

1960 年代の頃までは、タガメは全国的に生息していましたが、生息環境の悪化などにより数が減ってしまい、今では絶滅危惧種になってしまいました。

すでに絶滅したと考えられる地域もあります。

私も野生のタガメは見たことがありません。

田んぼの中で見かけることのあったタガメなどの水生昆虫。
いったい何が、彼らのすみかを奪っているのでしょうか?

日本の自然環境の変化

1960年代以降、田んぼの区画整理や水路の整備が進み、農作業は機械でできるようになりました。また、ため池・湿地・用水路がコンクリート化することにより、自然の岸辺や泥底がなくなったことで、タガメが産卵や越冬が困難になりました。

作物の生産性は上がりましたが、その一方で、田んぼや水路は、生きものたちにとってすみにくい環境になってしまいました。最近では、農家の高齢化などにより、使われなくなった田んぼも増えてきています。

このような農業の変化は、タガメなど、田んぼにすんでいた多くの生きものにとって大きな影響を与えました。

外来種の影響

近年、ウシガエル・アメリカザリガニ・ブラックバスなどの外来種の生物が増加しています。

これらはすべて昭和初期から中期にかけて導入された外来種で、タガメの卵や幼虫、小魚などを捕食します。

また、上記の外来魚もタガメも肉食性なのでタガメはエサをよこ取りされてしまいます。

ペット需要による乱獲

1980年代〜2000年代にかけて、希少化とともに高値で取引されるようになりました。

数少ない生息地や保全活動が行われている場所がねらわれ、たくさん捕られたため、タガメが全くいなくなった地域もありました。

特定第二種国内希少野生動植物種に指定

「特定第二種国内希少野生動植物種」とは、種の保存法に基づく国内希少野生動植物種の中でも、商取引などが原因で個体数が減るおそれがある種について、販売や頒布などの目的で行われる行為に限定して規制されるものです。

(※種の保存法では、国内に生息・生育する、又は、外国産の希少な野生生物を保全するために必要な措置を定めています。)

わたしたちが「できること」「できないこと」

自分用に捕まえる ◎ OK
個人で飼育する ◎ OK
売ったり買ったりする ❌ ダメ!
販売目的で捕まえる ❌ ダメ!

調査研究や環境教育等を目的とした捕獲等、譲渡し等は規制の対象外

違反するとどうなる?

違反した場合には、種の保存法の規定に基づき以下の罰則が適用されます。

📄個人の場合
→ 5年以下の懲役もしくは
→ 500万円以下の罰金
またはその両方

🏢法人の場合
→ 1億円以下の罰金

小さな命が教えてくれること

タガメのような水生昆虫は、私たち人間の生活のすぐそばで生きています。彼らの数が減っているということは、それだけ自然のバランスが崩れてきているサインかもしれません。

「いかに命と共存するか」という視点が、これからの私たちの暮らしに求められているのではないでしょうか。

おわりに

水辺の命を守るために、私たちにもできることがあります。

田んぼの生き物に目を向けてみる。水路にゴミを捨てない。そんな小さな行動の積み重ねが、未来の生き物たちの居場所をつくることにつながるのだと思います。

参考:「三重県総合博物館」https://www.bunka.pref.mie.lg.jp/MieMu/83015046702.htm(アクセス日2025年6月13日)、環境省、「特定第二種制度の特徴」https://www.env.go.jp/content/900491899.pdf(アクセス日2025年6月13日)、「知って守ろう
タガメとゲンゴロウ」https://www.env.go.jp/content/000230939.pdf(アクセス日2025年6月13日)