この半年間、ノカノワでは自然栽培や有機農業に取り組む農家さんのもとへ取材に伺ってきました。
その中で印象的だったのは、慣行農家さんを否定的に語る方が、ひとりもいなかったことです。
むしろ多くの方が、
「長年農業を続けて、この地域を守り続けている農家さんは偉い」
「慣行農家さんの技術は、本当にすごい」
といった、リスペクトの言葉を口にされていました。
これが、現場で実際に聞いてきたリアルな声です。
また最近では、「減農薬に取り組んでいる農家さんも紹介してほしい」という声をいただくことも増えてきました。
しかしノカノワでは、「農薬に頼らない」という表記を掲げている以上、それらのご相談をお断りしてきたのも事実です。
その判断に、次第に違和感を覚えるようになりました。
表記が生む影響について
こうした違和感とあわせて、表記そのものが生む影響についても考えるようになりました。
自然栽培や有機栽培を中心に紹介してきた姿勢が、意図せず慣行農家さんへの偏見につながってしまう可能性もあるのではないか、と感じたからです。
現在の日本の食料供給を支えているのは、慣行農業であり、農薬や化学肥料を使う農家さんです。
少子高齢化が進み、耕作放棄地の増加や担い手不足が深刻化する中で、ノカノワが慣行農家さんへの偏見を生むメディアになってはいけない。
そう感じるようになりました。
ノカノワが伝えたいこと
ノカノワが紹介したいのは、「農薬や化学肥料に頼らない」という農法のジャンルそのものではありません。
伝えたいのは、それぞれ異なる条件の中で悩み、考え、判断しながら、日々、農業と向き合っている農家さんの姿です。
農業は、土地や気候、作物、周辺環境、出荷先などによって、最適な判断が大きく変わります。
大切なのは、使うか・使わないかという結果だけではなく、なぜその判断をしているのか、そしてその判断にどのように向き合っているのかだと、私たちは考えています。
とはいえ、化学物質過敏症など、化学物質への曝露が生活に直結する方にとって、農薬の存在が「避けたいもの」「切実なリスク」として感じられるのも事実です。
ノカノワは、そうした切実さを軽く扱うことはできません。
また、農業における資材の使い方は、環境への影響という観点でもさまざまな議論があることを、私たちは理解しています。
そのうえで、農業全体を善悪で単純に分けるのではなく、置かれている条件や判断の背景を丁寧に伝えていくことを大切にしたいと考えています。
なお、農家さんの取り組みを正確に伝えるため、各紹介ページではこれまで同様、農薬や肥料など資材の使用状況を可能な限り明記します。
使う/使わないを価値判断として扱うのではなく、読み手が自分の基準で選べるよう、事実として整理してお伝えしていきます。
これからのノカノワについて
こうした背景から、ノカノワでは、「農薬や化学肥料に頼らない」という表記をやめることにしました。
ノカノワが大切にしているのは、農法の名前ではなく、現場で積み重ねられている判断や工夫、そして農業との向き合い方です。
これからノカノワでは、自然栽培、有機農業、慣行農業まで、さまざまな形で農業に向き合う人たちを取材・紹介していきます。
その人がどんな考えで畑に立っているのか。
そこにある判断や葛藤を、これからも丁寧に伝えていきたいと考えています。
今後とも、ノカノワをどうぞよろしくお願いいたします。