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ジャンボタニシは害虫か?自然と共生する立場から見たもう一つの視点

ピンク色の卵を田んぼの畦にびっしり産みつける「ジャンボタニシ」。
正式にはスクミリンゴガイという外来生物で、多くの農家にとっては「稲を食べる厄介な害虫」として知られています。

けれど、肥料や農薬を使わない農家さんの中には、
「ジャンボタニシが田んぼをきれいにしてくれる」
「除草の手間が減った」
と言う人もいます。

果たして、ジャンボタニシは本当に“悪者”なのでしょうか?
それとも、共に生きるパートナーになり得るのでしょうか?

ジャンボタニシとは?

  • 正式名:スクミリンゴガイ(Pomacea canaliculata)

  • 原産地:南アメリカ

  • 1980年代に日本に食用目的で導入されたが、定着・繁殖

  • 現在は農水省により「重要病害虫」、環境省により「要注意外来生物」に指定されている

慣行農法では「農薬で退治」が一般的、でもリスクも

ジャンボタニシは、田植え直後の苗を食べることで被害を出すため、慣行農法(肥料や農薬を使う一般の農法)では殺貝剤(タニシ用農薬)を使って駆除するのが一般的です。

よく使われる農薬には以下のようなものがあります:

  • メタアルデヒド粒剤(スクミノンなど)

  • モリネブ粒剤

  • 稲作向けの複合殺貝剤

これらは、苗の植え付け時に田んぼに撒かれ、ジャンボタニシを脱水・麻痺させて駆除します。
しかし即効性がある一方で、環境や土壌への影響といったリスクも無視できません。

農薬使用による主なリスク

リスクの種類 内容
環境への影響 ドジョウ・カエル・メダカなど、同じ田んぼで暮らす他の水生生物にも影響が及ぶことがある
土壌への影響 成分が土壌中に長く残り、微生物の働きを阻害して土の健全性を損なう可能性がある
農薬依存のサイクル 駆除してもまた発生し、毎年使い続けることが当たり前になってしまう

これらの農薬は特定の生物だけに作用するわけではなく、田んぼという小さな生態系のなかで暮らす他の生きものにもダメージを与える恐れがあります。

水質や微生物環境への影響が蓄積すると、持続可能な農業からは遠ざかってしまうのです。

農薬を使わない農法では“共生相手”になることも

ジャンボタニシは、雑草の芽や若葉を好んで食べる性質があります。
そこで、一部の農薬を使わない農家さんたちは、次のように活用しています:

有用なポイント

  • 除草剤なしで田んぼの草を抑えてくれる

  • 泥をかき混ぜてくれることで、水が濁り、光を遮断 → 雑草抑制

つまり、「稲を食べさせずに、雑草だけ食べてもらう」ことができれば、自然の除草役として活躍するというわけです。

ただし、この方法には細やかな管理と観察が欠かせません。

ジャンボタニシは、稲の苗も雑草も区別せずに食べてしまうため、うまく共生するには、苗がある程度育ってから水を入れるなどの工夫が必要です。

立場によって異なるジャンボタニシの見方

ジャンボタニシの存在は、「害虫」か「助っ人」か。
その評価は、立場や農法、そして目的によって大きく異なります。

視点 ジャンボタニシの扱い
慣行農業 稲を食べる害虫(殺貝剤で駆除)
肥料や農薬を使わない農法 条件付きで活用可能な除草パートナー
環境保全 南米原産の外来種として、生態系への影響が懸念される

慣行農業の現場では、苗への被害が直接収量に関わるため、ジャンボタニシは基本的に「駆除すべき存在」として扱われます。

一方、自然に寄り添う農家さんたちは、農薬を使わずに草を管理する方法として、タニシの行動を逆手に取り、“敵ではなく味方”として見る工夫をしています。

ただし、外来種であることに変わりはなく、環境省からは「要注意外来生物」として指定されており、野外放流や無秩序な拡散には注意が必要です。

ノカノワの視点

ノカノワでは、自然の循環に寄り添いながら、農薬に頼らず、知恵と工夫で自然と向き合う農家さんたちを応援しています。

ジャンボタニシのように「一見すると厄介な存在」でも、その行動をよく観察し、環境に合わせた工夫を凝らすことで、共に生きるパートナーへと変えていくことができます。

こうした姿勢こそ、ノカノワが信頼を寄せる農家さんたちの共通点であり、私たちが大切にしている価値観でもあります。

まとめ

  • ジャンボタニシ(スクミリンゴガイ)は、南米原産の外来種でありながら、日本の田んぼで定着

  • 慣行農業では、苗を食べる「害虫」として、殺貝剤による駆除が一般的

  • しかし、自然に寄り添う栽培では、雑草抑制などに役立つ“共生の相手”として活用されることもある

  • 活用には観察と工夫が必要だが、「敵か味方か」ではなく、関わり方次第で関係は変えられる

ジャンボタニシをめぐる議論は、ただの「虫の話」ではなく、私たちがどんな農業を選び、どんな自然と共に生きていくかという問いでもあります。

ノカノワはこれからも、人と自然が無理なくつながる方法を模索し続けていきます。